土地や建物などの不動産をご購入された際や、相続をされた際に、所有者が移転すると、公に不動産の権利を示すものとして登記簿に記載する為に、法務局に登記の手続きを行います。
この際に、不動産の権利者である本人確認として『登記識別情報通知』が発行されます。
こちらでは不動産の登記と、登録識別情報について解説します。
登記とは?
登記は、ひとつの不動産に対し、必ずひとつ存在します。
現在は電子データとなっており、登記情報は紙での管理ではなく電子的に保管されています。
この情報を紙で発行したものが『登記事項証明書』です。少し緑色がかった紙に印字されます。
電子データですので、インターネットでも情報を取得することができます。登記事項証明書は、だれでも何度でも取得できます。(※1筆480円の発行費用がかかります)
昔は、法務局も紙での情報保管だったため、情報を知る為にはその不動産を管轄する法務局に行くか、郵送でコピーを発行してもらっていました。
その為、今でも“証明書の写し”を意味する『謄本』と呼ばれますが、現在は正式には『登記事項証明書』と呼びます。二つの呼び名が色々でてくるのは、この為です。
『登記簿謄本』と『登記事項証明書』は、ほぼ同じ意味です。
登記事項証明書は不動産ごとにひとつずつ作成され、下の見本のように、それぞれ「表題部」・「権利部(甲区)」・「権利部(乙区)」の3つに分かれています。
■表題部
一番上に記載される『表題部』には、どこにある・どのような不動産であるかを明示している部分です。
1つの不動産に必ずひとつですので、例えば、
1筆の大きな畑だった不動産を、10に分割して宅地にすると、1筆の土地を分筆して10筆にする登記を行い、登記情報が10筆分作られます。
表題部には、
●土地の場合
地番(どこに)…住所とは別で、法務局が管理する番号です。住所と同じ地域もあります。
地目(どんな)…畑、宅地、雑種地(行政によって指定されるごみ置き場等)など土地の種類が記載されます。
地積(大きさ)…土地の大きさ
所有者などが記載されます。
●建物の場合
所在
家屋番号
種類…居宅などの建物の種類
構造(どんな)…木造など
床面積(大きさ)などが記載されます。
一般的に土地家屋調査士が、実際の建物を確認し行います。
登記というと、司法書士が行うイメージが強いですが、表題登記は司法書士は行えません。
また、建物にビルトイン駐車場などがある際には、「建築確認済証」と「登記事項証明書」の記載面積が異なることがありますが、これは建築基準法と不動産登記法とで求積方法が異なる為です。
建築基準法では、屋根や庇があるスペースを算入しますが、不動産登記法では含みません。
不動産登記法に基づいて算出された面積が、固定資産税の課税対象となります。
■権利部
不動産の権利を表記した部分です。
例えば、新築分譲住宅をご購入された場合の登記では、司法書士は新たに表題登記された建物に権利を示す「保存登記」と、土地の「権利移転登記」、金融機関からお借入されたことを明示する「抵当権登記」などを行います。
真ん中の権利部(甲区)には、所有者の権利を示す情報が記載され、現在だけではなく過去の履歴(いつ、どのような経緯で移転したか・誰から誰に売買や相続したかの記録)が残るので過去に遡って調べることができます。
一番下の権利部(乙区)には、所有権以外の抵当権や地上権、地役権などの情報が記載されます。住宅ローンを貸し出す金融機関は、ここに土地や建物を担保として抵当権を設定します。
住宅ローンを完済されたときや、住所を変更されたとき(引き渡しを受けた際に以前の住所で登記した場合)などは変更登記が必要です。
登記済証とは?
不動産登記事務が電子化される以前は、権利登記において、登記手続きの完了後に、登記をした者(登記名義人)に対して、登記申請書の写し(副本)に登記官が「登記済」と押印したものが返還されていました。
この登記名義人となった者に返還される押印された申請書副本が「登記済証」と呼ばれます。
登記済証は、登記名義人が所持し、その所持者が登記名義人であることを公的に証明する書面であることから、「権利証」とも呼ばれていました。
しかしながら、不動産登記法が改正され(施行日は2005(平成17)年3月7日)、本人確認は登記識別情報によることとされたため、登記済証の発行制度は廃止となっています。
ただし、制度廃止後の初回の書面申請においては、申請人は未だ登記識別情報を保有していないため、その場合には登記済証の提出によって本人確認を行うこととされています。
(引用)一般社団法人 不動産流通経営協会
https://www.re-words.net/homenavi/description.php?t=print&n=747
2005年以前に登記された不動産を相続をされた際などに、目にされることがあると思われますが、『登記済証』と記載されているものが、現在の『登記識別情報通知』と同等の効力をもった書類です。
登記識別情報通知とは?
現在は、権利が移転すると、『登記識別情報通知』が発行されます。
現行の不動産登記法における『登記済証』で『権利証』を指し、左のように、一番下の部分に大きなシールが貼られています。
不動産の権利者であることを証明する書類ですので、とても大切な書類です。
権利移転の際に法務局に登記を届け出てから、約2週間前後で発行されます。
通常は司法書士から書留などで郵送されます。
決済でお引渡しをされてから、お引越しで慌ただしい時期にお手元に届くことも多いので、届いたら内容を確認して、家族で保管方法を決めておきましょう。
登記識別情報通知には「ここを折り曲げてから切り取って開いてください」と記載されているので、シールをめくり開けることが出来るようになっていますが、めくってしまうと誰でもパスワードが見えてしまい、書き写されてしまう危険もあるのでめくらずに保管しましょう。
シールの下には、左の見本のように英数字12桁の番号が記載されています。
このパスワードだけでは、盗まれた際に勝手に登記を変更することはできないのですが、「実印」や「印鑑証明書」が一緒に盗まれてしまいますと、権利が移転できてしまいますので、一緒に保管をしないように注意しましょう。
登記識別情報通知は紛失しても再発行はされません!大切に保管しましょう。
万が一、登記識別情報通知を紛失をされたときには…
万が一、登記識別情報通知を紛失してしまった際には、如何なる理由でも法務局は再発行はしないので、司法書士に代わりの書類となる『本人確認書類』を作成してもらいます。
ただしその際には、書類の作成費用がかかりますので、まずは金庫など、大切に保管する場所を決めて置きましょう。
盗まれたことが明らかな場合には、管轄する法務局に届け出を行い、登記識別情報を取得した者が、登記名義人になりすまして不正な登記を行う可能性を防ぐために不正登記防止申出の手続きをとることもできます。
不動産を売買した際や、相続をなされた場合には、権利を守るために速やかに登記することが大切です。また、登記済証や、登記識別情報通知は紛失しないよう、保管場所を家族で決めて、大切に保管してください。