様々な住宅をみていると、北側がよく勾配天井になっているのを見ると思います。
「なぜ、天井が低くなるのか?」
「天井を低くせず高いままにしてよ!」と、誰もが考えると思います。
これには理由があり、斜線制限という法律上の制限が影響してくるためです。建築基準法では隣地の日照を確保するために建物の高さを制限しています。
高さ制限には
- 絶対高さ制限(建物の最高高さの制限)
- 斜線制限(道路側・北側・隣地側それぞれに違った斜線状の高さ制限)
- 高度斜線(地域ごとに違った数値の斜線状の制限)
- 日影規制(建物によってできる影の制限)
以上の大きく分けて4つの制限があります。
この中で主に北側の天井に影響を与えるのは②番と③番です。
斜線制限についてはご存知の方は多いと思いますが、図のような制限がかかります。
住宅を建てる際、この斜線制限からはみ出ないように計画しなければなりません。
では、この斜線からはみ出ないように建物を配置すれば良いのでは。
確かにその通りで、図のように隣地境界線から距離を取って建物を配置すれば斜線からはみ出しませんから問題ありません。
しかし、これですと北側に広い空地ができてしまいます。
住宅を計画する際に「北側より日当たりの良い南側を広く」が鉄則です。
ですがこのまま北側にずらすのは建物が斜線制限からはみ出てしまうので不可能です。
そこで登場するのが、「母屋下げ」というテクニックです。
「母屋下げ」とは、図のように軒桁(のきげた)という材を通常の高さより低い位置に設定することです。
これをすることにより、建物の北側の高さを低くすることができ、より北側に建物を配置することができるため、南側により広い空地を確保することができます。
母屋下げをすると北側の建物の高さが低くなるため勾配天井となります。
北側に勾配天井がよくあるのはこういった理由がありました。
また、「母屋下げ」というのは南側に広い空地を確保できるメリット以外に、建築可能範囲が広がるというメリットもあります。建築可能範囲が広がることで、リビングを広くできたり、収納を増やすことができたり、部屋を一つ増やすことができる可能性がでてきます。
「母屋下げ」とは空間をより有効活用するためにとても重要なテクニックなのです。
私たち設計者は、いかに敷地を有効活用できるか、より敷地にあった良いプランは何か、を常に考え日々奮闘しております。
今後もより良い住宅をお客様にご提供できるよう日々精進して参ります。
自由が丘支店 設計 J・T