先日、「ル・コルビュジェの家」という映画を見ました。
ル・コルビュジェは、20世紀を代表する建築家で、近代建築における三大巨匠の一人に数えられます。
日本では唯一、上野にある東京国立西洋美術館を設計しました。
のル・コルビュジェが設計した「クルチェット邸」が舞台となっています。
私自身コルビュジェの住宅を生で見たことがないので、せめて映像でそれを体感したいと思ったのと、
3週限定のロードショーだったので、行くしかないと思い新宿のミニシアターに足を運びました。
主人公であるデザイナーのレオナルド一家はこの「クルチェット邸」に住んでいます。
ある日、隣に引っ越してきたビクトルが自分の家の壁に穴を開け出しました。
太陽の光が欲しいからという理由でしたが、
「クルチェット邸」がちょうど覗かれるくらいの位置に窓を作り始ます。
レオナルド一家はプライバシーを守るために猛反対。
ささいなトラブルから大騒動へと展開して行きます。
シュールな笑いを織り交ぜながらも物語は思わぬ方向へ・・・・・
と、ついつい話しすぎてしまいそうなので映画の内容はこの辺りにしておいて。
この映画で面白いと感じたのは、名建築を背景に繰り広げられているのは、
日常的な生活やシュールなやりとりでした。
そのギャップが何とも不思議な感じでした。
名建築といっても住宅である以上はそこでは生活が営まれているわけで、
フィクションではあるもののそこには人が「住まう」という現実味がありました。
名建築のドキュメンタリーではなく、名建築がただの舞台となっている、
そのあっさり感というか何気なさが住宅を魅せるということにおいて
自然な感じがして好きでした。
中でも屋外なのか屋内なのか戸惑うほど開放的な空間を横断する傾斜路が印象的でした。
断面図の中で真ん中に位置し左右をつないでいる部分です。
それぞれの空間を繋ぎ変化を持たせたり、生活風景や外部の風景を映す場所であると感じました。
「自然との繋がりと、“建築的散策”は建物内における人の動きを制御し、外の緑へと視線を導く。
公園の眺めはブリーズ・ソレイユ(庇状のルーバー)のコンクリート枠によって注意深く縁取られ、
まるで家が公園に一体化しているようである。」と評論されている本を以前読んだことがあります。
ちょっと難しい内容ですが、実際にその場所に行くとそんな感じなのかもしれないな、
と、この映画を見て分かったような気がしました。
私もこの詩的な散策路の上を実際に歩いてみたいものです。
ちなみにこの建築はアルゼンチンのブエノスアイレス近郊の都市ラプラタに建っています。
コルビュジェがアメリカ大陸で設計した唯一の私邸です。
最後に、映画「ル・コルビュジェの家」はシネマート六本木で現在公開中です。
興味のある方はコルビュジェの空間を体験してみてはいかがでしょうか。
設計 小田