2024年11月、恒例の海外研修旅行が数年ぶりに復活。
幸いなことに参加の機会をいただき、スペインはバルセロナを訪れました。
バルセロナはアントニ・ガウディらによる独創的な建築物や、ピカソやミロなどの芸術家が生み出した芸術作品などで世界的に有名な都市です。 美しい街を歩き、名所を巡る中で多くの驚きと感動を覚えました。その中でも、特に印象に残った建築物や都市のデザインについてお話しさせていただきます。
■カサ・ビセンス
カサ・ビセンス(Casa Vicens)は、若きガウディが初めて住宅設計を手掛けた建築です。 ガウディ建築の特徴の一つに曲線的なデザインが挙げられますが、こちらは彼の初期作品のため直線的なデザインが多く見られます。
伝統的なカタルーニャ建築に東洋・アラビア風の要素が融合されており、街の中でも特に目を引く色鮮やかな装飾がとても印象的でした。 植物をモチーフにしたタイルやフェンスが各所に施され、自然との調和を重視するガウディの創造性の原点が見られる建築でした。
■バルセロナ市内の舗装タイル
“自然との調和”という特徴は街の中でも見つけることができました。 バルセロナで最も有名なショッピングストリートであるグラシア通りには、ガウディがデザインした六角形のタイルが敷かれています。海辺の街バルセロナの中心地かつビーチへとつながる道でもあるため、このタイルには海洋生物などの模様が描かれています。
そのほかにも市内の歩道には「バルセロナ・フラワー」と呼ばれる、お花をモチーフにした可愛らしいタイルが敷き詰められています。これはバルセロナのシンボルでもあり、土産品のポストカードやコースターなどを街の様々なところで目にしました。
見逃してしまいそうな小さな部分にも注目です。細部に至るまで自然モチーフや地域性への敬意が感じられ、ディテールのこだわりが街全体の魅力を引き立たせていることを実感しました。
■サンパウ病院
サンパウ病院(Hospital de Sant Pau)は、リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーの設計による壮大な建築群。ムンタネーはガウディの師匠であり、また良きライバルであったともいわれる著名な建築家です。2009年まで実際に病院として使われていた建築物ですが、訪れた瞬間、まるでテーマパークか何かかと思ってしまうほどの鮮やかで豪華な外観に大変驚かされました。
カラフルなタイルやステンドグラスで装飾されたドーム空間では、自然光を取り込むことで明るさや温かみを感じさせます。 建物全体が患者やスタッフの心を癒すことを目的としてデザインされており、建築美と機能性を共存させていることにとても感銘を受けました。
■コロニア・グエル教会
コロニア・グエル(Colònia Güell)教会は、バルセロナ郊外にあるガウディ設計の教会。サグラダ・ファミリアの原型ともいわれる建築物です。 様々な要因から建設は未完成に終わり、現在は地下礼拝堂部分のみが残っています。
傾斜や曲線を多用し地形に合わせて設計されており、自然と調和することで建物自体が風景の一部となっています。礼拝堂の内部はまるで洞窟の中のよう。 鮮やかなステンドグラスは内部に明るい光を取り入れるだけでなく、窓を開くと十字架を模した形になり、宗教的な役割を持ちます。
外観に施された様々なデザイン一つひとつにもキリスト教の教えに基づく意味が込められているとのことで、細部に至るまでガウディの革新的なデザイン思想が色濃く反映されていました。
■まとめ
今回の研修旅行では、建築デザインについて様々なインスピレーションを得ました。
地域性を反映したデザインや自然環境との調和を意識した設計は住宅設計にも生かされるもので、こうした学びを実践することで住まいの価値をさらに高めることができると感じました。
バルセロナの街並みから学んだことは、単に個々の建物が美しいだけではなく、街全体が調和し、統一感を持つことの重要性です。これは、デベロッパーとして街並みを作るアグレ都市デザインの仕事にも大いに通ずるものがあります。
このような体験を設計に活かし、より多くの方に喜んでいただける住まいを提供できるよう、今後も努めていきたいと思います。
設計:宮原