残したい、と思える街

ロイヤルベビー誕生はもう間近ですね。

お久しぶりです、設計の小田です。

イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃の第一子出産に世界が注目し、日本のメディアもまだかまだかと連日ニュースで報道しています。

世界の期待が高まる一方で、出産予定はずれ込んでいるようで、今朝のニュースでは来週あたりになりそうだとか。いつ産まれるかは神のみぞ知るということで気長に待つしかないですね。
とにかく元気な赤ちゃんが誕生してほしいです。

今年の5月、GW休暇を利用しイギリスに行ってきました。
古いモノが好きなこともあり、アンティークや街並みを見るために、ロンドンを拠点に8日間滞在しました。

建物は歴史を感じるものばかりで、古い木製の格子窓や鋳物の柵、レンガや石の外壁など、そのどれもが、手作り感のあるというか、工業製品とは異なる温かみを持っていました。

思わず触れてみたくなるような質感が街には溢れています。

歴史を感じさせる佇まいはもちろんですが、それらの建物が、今も人々の生活の場として利用され、どの建物も現役であることに驚かされました。

特にロンドンの古い街並みは、時が止まったような静的な雰囲気を醸し出しつつも、そこから溢れ出す生活感や人々の活気によって、動的な印象を持った生き生きとした街並みとなっているところに魅力を感じました。

ライという港町にも足を運びました。
ゆったりとした雰囲気の中に、中世の街並みが今も生きていました。
歪んでいる建物や何度も塗り重ねられた外壁、それぞれの建物には味があり、独特の魅力を放っていました。

道に沿って寄り添うように建ち並ぶことで、その連続する壁面が奥のほうへと導きます。
歩いていて楽しくなる道空間がいくつもあります。

こういった街並みが残っているということは、国や自治体など、政策として保全している部分もあるとは思いますが、街の人々のそれらを残そうとする意志や古いモノを大切にするといった精神が少なからず建物や街並みにも影響しているような気がしました。

サンドウィッチ

もしそこに住んでいたら、残したい、と思える街ばかりです。

これらの街には“文脈”があります。

文脈とは、文章の流れやつながりのことです。このワードは都市デザインの分野でもよく使われます。
文脈が読み取りやすければ、物語をしっかりと理解することができます。逆に文脈がちぐはぐだと、物語は成立しません。
都市においても同様のことが言えます。

イギリスの街は、写真からもわかるように、都市の文脈が読み取りやすいので、「物語の方向性」、つまりはその街のあるべき姿というものを明確に見出すことができます。
誰もがその価値を認め、それらを維持・活用していくということにつながります。

コッツウォルズ

日本がイギリスの街から学ぶことはたくさんありそうですね。

“文脈”のない、カオス的といわれる東京において、「物語の方向性」を見出していくことは容易ではありませんが、新しい建物を創出していくわれわれとしては、その街の“文脈”となり得るようなプロジェクトを実現させていかなければならないですね。

イギリスの街を羨ましく思いますが、われわれも「残したい」と思ってもらえるような価値のあるものを設計していきたいものです。