~イタリア美食紀行~ イタリア研修旅行[1]

2025年10月、アグレ都市デザイン恒例の海外研修に参加させていただきました。 
現地の建物などを見て学ぶための研修…のはずが、気づけば私の心を一番掴んでいたのは“食”でした。 

訪れたのは情熱・美・食が息づく国、イタリア。 ローマとバチカン市国をメインに、巡ります。
街角を歩くたびに漂う香り、レストランで出会う見たことのない料理、そしてその土地ならではの素材の力強さ。初めての一皿ごとに「イタリアってすごい」と思わされ、旅のワクワクがどんどんふくらんでいきました。 

ここでは、建築の見どころは他のメンバーにお任せして、私が心から感動した“食のイタリア”を綴っていこうと思います。 

1食目「カチョ・エ・ペペ」 

出発前から食べ物については念入りに調べており、その中でも特に食べたいと思っていたのが「カチョ・エ・ペペ」でした。まさか到着して最初のランチで、早くもお目当ての一皿に出会えるとは思いもしません。 

カチョ・エ・ペペ

「カチョ・エ・ペペ」はイタリア語で「チーズとコショウ」を意味する、ローマの郷土料理。
名前の通り、ペコリーノチーズと黒胡椒だけという非常にシンプルな味付けです。正直、簡素すぎるのでは?と半信半疑でしたが、本場の味はその想像を軽く超えてきました。1食目という高揚感も相まって、気づけばペロッと完食。イタリアの底力を感じると同時に、「この研修旅行は絶対に楽しくなる」と確信させてくれる一皿でした。 

2食目「オレキエッテ」「ポルケッタ」「ティラミスとエスプレッソ」

1日目の晩餐です。
まず1品目は「オレキエッテ」。イタリア語で「小さな耳」を意味し、その名の通り耳たぶのような可愛らしい形をしています。
これまで麺状のパスタしか食べてこなかった私にとって、初めての“麺ではないパスタ”。凸凹のある独特の形状にソースがよく絡み、何よりモチモチとした食感が印象的で、ソースというより“パスタそのもの”を味わう一皿でした。 


2品目は「ポルケッタ」
イタリア語で「豚の丸焼き」を意味する伝統料理で、これも事前に調べて狙っていた料理のひとつです。一見ただのローストポークですが、一口食べると日本とはまったく違う味付けに驚きます。イタリアならではのスパイスやハーブが複雑で奥深い香りを生み、豚肉本来の甘みと脂の旨味がじんわりと広がる……。恐らくニンニクやローズマリーなどが使われているのだと思いますが、飽きずに食べられる絶妙なバランスの一皿でした。 

3品目は「ティラミスとエスプレッソ」。甘党でティラミスにもうるさい私ですが、これは文句なしのおいしさ。カスタードクリームの甘さに油断した瞬間、カップ下段に隠れていたエスプレッソがしみ込んだ苦みのある生地が登場し、そのコントラストが最高でした。エスプレッソ自体も、ティラミスの甘さや食事の後味をすっと洗い流してくれる、本場ならではのキレのある味でした。 

3食目「リガトーニ・アマトリチャーナ」

コロッセオにて

2日目に入りました。午前中は全体行動でコロッセオへ――その圧巻のスケールにただただ魅了されました。そして、午後に予定されているバチカン市国の見学を前に、お昼休憩です。 

「アマトリチャーナ」とは、ローマを代表するトマトソースのパスタのこと。先に登場した「カチョ・エ・ペペ」「カルボナーラ」と並び、ローマ三大パスタのひとつに数えられます。「リガトーニ」は、イタリア語で“線を引く”を意味する言葉が語源のパスタで、太い筒状の形と表面に刻まれた縦筋が特徴です。 

太めで存在感のあるリガトーニの内側と表面の溝に、濃厚なトマトソースがしっかりと絡んで絶品。口に入れた瞬間、トマトの甘み、チーズの香り、そしてグアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)の心地よい塩気が一体となって、豊かなハーモニーを奏でる美味しい一皿でした。 

4食目「ピザ」

全体行動後の夕食は自由時間となっていたため、有志を募って一緒に食べに行くことに。ホテルのフロントでおすすめのピザ屋さんを紹介してもらい、総勢10人で向かいました。ここでハプニングが発生。シェア文化が根付く日本と違い、イタリアでは基本的に一人一品注文が原則。例に漏れず、訪れたお店でも各自1品ずつ頼むことになりました。 

運ばれてきたピザを見て驚愕。とにかく大きい!
しかしそれ以上に味のインパクトが凄かったです。薄く香ばしい生地に、トマト・モッツァレラ・バジルの赤白緑が鮮やかで、まるでイタリアの国旗のよう。食べてみると意外とシンプルな味わいですが、素材の旨味がじんわり広がり、シンプルながら奥深い――
“これが本場の味”だと心から実感できる一皿でした。 

5食目「ポルチーニ茸のリゾット」「タリアータ」「アバッキオ」

3日目は1日自由行動のためフィレンツェへ向かいました。朝5時半の出発だったため朝食はマクドナルドのカフェラテのみ。味はとてもおいしかったのですが、お昼ごろになるとやはりお腹がすいてきました。フィレンツェの郷土料理もたくさんあるのですが、しっかりとしたお肉を食べていないということで、メインを肉料理に絞ったレストラン探しをして、評価の高い場所でいただいた3品です。 

1品目は「ポルチーニ茸のリゾット」でした。麺というか小麦粉に若干の飽きを感じていたため、日本人になじみ深いお米を食べることに。ポルチーニ茸は世界三大キノコのひとつで特有の深く豊かな森の香りが食欲をそそります。一口食べると肉厚なキノコの触感と風味が口いっぱいに広がりおいしい!またクリーミーだけどお米の芯がわずかに残ったアルデンテの歯ごたえが癖になります。ポルチーニの旨味がシンプルながらも深い味わいの一皿でした。 

2品目は「タリアータ」。イタリアの定番牛肉料理で、語源はイタリア語の「切った」という意味です。ルッコラとパルミジャーノチーズがかかっているのが特徴です。ルッコラ特有のピリッとした苦みが肉の脂の甘みと絶妙にマッチし、チーズのコクと塩味がアクセントになっていて、見た目はワイルドですが上品な味わいの一皿でした。 

3品目は「アバッキオ」という料理で、イタリア語で生後間もない子羊を指す言葉です。
実はジンギスカンが好物で月1程度食べに行くのですが、このように骨付きで提供されるのは初めてなのも相まって食べる前から期待をしておりました。味はラムに比べて羊特有の臭みや癖が少なく淡白。また肉質は柔らかく、ジューシーで旨味がたっぷり詰まっていました。付け合わせのポテトも含めてペロっと平らげてしまい、名残惜しくもランチは終了です。濃厚な旨味が特徴のまた食べたい一皿でした。 

6食目「トマトとツナのリングイネ」「白身魚のソテー」「デザート」

大変申し訳ありません、料理名を聞き忘れてしまいました。大失態です。 

1品目はおそらく「トマトとツナのリングイネ」
正確な名前は不明ですが、このイタリア旅行で食べたパスタの中で最も美味しく感じた一皿でした。麺はスパゲッティより幅広で、モチっとした弾力のある食感は、どこか日本のラーメンを思わせる親近感と懐かしさがあります。濃厚なトマトソースが麺によく絡み、馴染み深いツナがどこか家庭料理の安心感を与えてくれます。恐らくオリーブオイルやニンニクも使われており、皆さん口々に「ボーノ」とつぶやきながら楽しんでいました。旅の締めくくりにふさわしい一皿です。 

2品目は「白身魚のソテー」
郷土料理なのかどうかや、イタリア語での名前は不明ですが、魚はとにかくふわふわ。ソースはクリームベースに塩とニンニクがほどよく加えられており、1品目のパスタの後でも最後までおいしくいただけました。下に敷かれたほうれん草も含め、日本人なら間違いなく好きだと感じる懐かしい味わいの一皿でした。 

3品目はデザート。ジェラートとアイスクリーム、いちごが添えられた一皿で、口当たりさっぱり。甘さ控えめで最後まで美味しく楽しめました。 

番外編「ワイン」「グラッパ」 

とにかくたくさんのワインをこの研修旅行で楽しみました。白ワイン、赤ワイン、プロセッコ……
どれもお料理と一緒にいただくと格別で、イタリアの風に当てられて旨味が何倍にも感じられたのかもしれません。ワインだけでなく、ワインに合う料理も豊富なイタリアは、本当に素晴らしい国だと実感しました。 

そして、もうひとつ紹介したいお酒が「グラッパ」です。2度いただきましたが、一言で表すなら「強いスピリット!」。ワインを造る際に残るブドウの搾りかすを蒸留して作られる、イタリアの食後酒です。アルコール度数は40~60%と高めで、ゆっくり味わうのが本来の飲み方だと思いますが、私たちはショットグラスで一気に飲み干し、喉が焼けるような感覚を体験しました。しかし飲み終わると驚くほどすっきりとして、食後の重さがすっと消える感じ。日本でもサイゼリヤで楽しめるそうなので、機会があればまた味わいたい一杯です。 

食後に

今回のアグレ都市デザインの海外研修では、建築の学びはもちろんですが、私は何より“食”を通してイタリアという国の豊かさを味わうことができました。

カチョ・エ・ペペに始まり、郷土色あふれる肉料理やリゾット、そして締めのグラッパまで……どの一皿にも、その土地の文化や歴史、人々の暮らしがしっかりと息づいていました。 


料理の味わいだけでなく、仲間と囲んだテーブルでの時間や、店員さんの気さくな笑顔、街の香りや空気――

それらすべてが混ざり合って、この旅をより特別なものにしてくれたように感じます。 


「イタリアは食の国」とよく言われますが、実際に訪れてみると、その言葉の意味を身体ごと実感できました。シンプルなのに奥深く、素材を尊重し、食べる人を幸せにする力がある。それこそが、イタリア料理の本質なのだと思います。 
またいつか訪れて、今回出会えなかった料理にも挑戦したい――そんな次の旅への期待も生まれた研修でした。 
読んでくださった皆さまにも、少しでもイタリアの“おいしい記憶”が届いていれば嬉しいです。 

営業:Yabuki

バチカン市国にて