Less is more.

伊勢丹の紙袋が55年ぶりにリニューアルしたそうです。定番の格子のデザインを大きくし、色づかいも明るくなりました。
実は、弊社の紙袋のデザインも変更をしているところです。

新しいバッグ
以前のバッグ

これまでのバックは、黒地にシルバーのロゴでしたが、今回は、グレー地にシルバーのロゴとしミニマルなデザインとしました。こちらは、来年から使用する予定です。

表題の『Less is more.』は、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠と呼ばれたミース・ファン・デル・ローエが提唱したもので、『より少ないことは、より豊かなこと』と和訳されミニマルデザインでは良く使われれている言葉です。

装飾を削ぎ落した最小限でつくられた空間こそが豊かな空間である。

ミース・ファン・デル・ローエは、建物をシンプルな箱に置き換え、デザインに使用される造形モチーフは極限まで削ぎ落し工場生産された規格の鉄とガラスのみで、シンプルな構成でありながら豊かな空間を実現さた建築家です。

その究極の住宅が有名な「ファンズワース邸」です。

「ファンズワース邸」は、緑の中に、白とガラスの箱が端正に建っている別荘です。
ガラスで囲われた内部は、水廻りを収めたコア以外には間仕切りのない空間で住む人が自由に使う「ユニバーサル・スペース」と名付けられた空間です。一見すると単純なガラスの箱のようですが、完成度の高いシンプルさは、緻密な計算と細かいディティールへのこだわりがあったからこそです。
God is in the detail」(神は細部に宿る)と語ったミース・ファン・デル・ローエの建築思想を実によく表現された建物です。

シンプルとミニマルは、一見すると同じに見えますが、作り方に違いがあります。
余計な物を何もたさないのがシンプルであり、必要なもの意外をそぎ落としていくのがミニマルと言われています。

ミニマルデザインは、最近のWEBデザインでの主流となっており90年代にファッション業界でも流行りました。身近なところでは、iPhonをはじめとしたアップル社の製品やデザインが重要なファクター以外を極力そぎ落とし、洗練されたモノになっております。

要素が多すぎると結局なにが主張したいのかわからないデザインになってしまいます。
それを避けるために、見せたいものや伝えたいことの中から引き算をしていき、最小限度におさえたデザインをミニマルデザインと呼んでいます。
装飾が多すぎるとどれも目立たなくなる、無駄を削ぎ落した方がより美しく効果的であるという考えです。

日本古来の木造建築は、剥き出しの柱と梁の構造体と襖と障子などの引き戸で空間をフレキシブルに間仕切ることを可能にし、ユニバーサルな空間を作っていました。
また、欄間や襖、天井に装飾を施す場合がありますが構造体は飾らず落ち着きのある豊かな空間を生み出しています。日本人は、昔からLess is moreの空間を身近に感じていたのです。

住宅とは、家族の暮らしを守るための「器」であり、鑑賞のための茶器とは違います。
家族が快適に過ごせ、豊かになれる器でなければなりません。
「パッと見て、リッチに見える」装飾は、デコレーションであり、「装飾」はあくまでも装飾です。
住宅において、デコレーションしすぎると落ちついた佇まいがなくなりうるさい空間にしかなりません。
とは言え、料理が、盛り付け方と器で、さらに美味しく感じるものであるように貧しすぎる器では、豊かさは望めません。

物質的な豊かさよりも、精神的な豊かさを重視するようになってきている現代。
家族が豊かで快適な空間を感じる『器』をつくるためには盛っていくだけではなく、盛っては、削ってのくり返しの作業が大事なのだと思います。