気づけば桜が満開ですね。
もう春です。
花粉で目が痒くて、目を細めながら設計に励んでいます。
お久しぶりです、設計の小田です。
“光と影”
以前見た某メーカーのカメラのCMが印象的でした。
“光”を求めて撮影を進めているうちに、“影”の存在に気づいていくといった内容です。
これを見た時、自分も同じ体験をしたことがあるのを思い出しました。
昨年イギリスのライに訪れた時、その古い街並みに一際目を引く重厚にたたずむ古い教会がありました。
900年以上の歴史を持つ教会です。
塔上の時計は1561年に作られたようでイギリス最古のものだそうです。


決して華やかな様式ではなく素朴なたたずまいではあるのですが、歴史の重みを感じさせる独特の雰囲気があり、何ともいえない心地よさ。落ち着きを得られる空間でした。

薄暗い空間にステンドグラス越しの光がぼんやりと床を照らしています。
決して明るくはありませんが、暗い中の1つの光が「明るさ」というものを強調しているように思えました。
そのぼんやりとした柔らかな光に導かれるようにして訪れた人たちは大きなステンドグラスの前にたたずんでいたのを覚えています。
この建物における、光と影の強い対比は、空間に奥行感を生み、より立体的な重厚感のある雰囲気を演出しています。光によって映し出され造形の陰影が美しく印象深かったです。
まさに光を求めていたら、影の存在に気づいたといった感じでした。
というよりもこの建物によって気づかされたといった感じでしょうか。

ここで、住宅の設計における光と影について考えてみます。
明るいリビングダイニングを想像してみて下さい。
“光”は、明るく温かな雰囲気を作り出し、生活に豊かさをもたらすものですよね。
一方で、ただ明るさだけを与えてしまうと、単一な空間になりがちで、何よりも落ち着きが得られないと思います。やはり落ち着いた雰囲気をつくるためには、“影”が必要になるのではないでしょうか。
住宅は、一見すると“光”さえあれば良いようなイメージになりがちですが、実は“影”も同じくらい重要なのです。
私たちも設計するうえで“光と影”を意識しています。


写真のように、天井の凹凸を大きくとったり、窓の形状を変えて取り込む光の表情を変えたり、あえて開口を設けず一面を壁にしたり…。
教会のようなダイナミックな造形でなくとも、ひと工夫するだけで、いくらでも家の中に“光と影”を作り出すことができます。
“光と影”は住宅において、“豊かさと落ち着き”を獲得するための重要な要素である思います。
またこれらを上手く操ることで、造形以上の価値が見いだされていくのだと思います。
それにしても“光と影”を操ることは難しいです。
特に時間と共に表情を変える自然光の場合は。
まだまだ学ぶことが多いので、これからもひたむきに頑張りたいと思います。
